アートによる町おこし

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日曜から昨日まで、10年前から始まり、3年に一度開催される
新潟の「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」を体験しに行ってきました。

6年前にも一度行ったので、今回が二度目になるのですが、以前よりも着実に内容が充実し、広範囲な地域にわたって行われてます。それに車の多くが他府県ナンバーで、老若男女とわず大勢の人が集まり、盛り上りっていました。何百ものアートを見てまわるのは、二泊三日の旅では不可能なので、見た中からほんの少しだけ紹介します。

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森の学校「キョロロ」では、本来ならゴミとなる流木や枯木で工作体験をしています。
その場ですぐに出来て、持ち帰れるものから、そこそこ時間のかかりそうなものまで、専門の指導員(といっても地元のおじさんですが)が、いっしょに作ってくれます。子どもはもちろん、若い女性にも大人気で、常時行列していました。

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わかりにくいかもしれませんが、様々なハーブを人の形に寄せ植えしてあります。
その向こうに隣接するカフェで、庭?を眺めながら、ハーブティーが飲めます。

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一泊目の宿「脱皮する家」です。
これは空き家プロジェクトと呼ばれるものの一環ですが、古民家のありとあらゆるところをノミで削りまくり、廃屋に新しい生命を与えています。見るだけでなく、そこに立つだけで足裏に削り跡が感じられ、彫った人達の情熱が伝わってきます。

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脱皮する家の近くにある、「コロッケハウス」です。
これも空家プロジェクトの一つですが、目に見えるあらゆるところに特殊な金属粉を吹き付けており、ざらっとした衣をまとい光る家が、風景を呼び込み、見たこともない対比を見せています。土日には、名の通り、コロッケも販売されていました。脱皮する家もコロッケハウスも、大学生達によって生まれ変わり、維持されています。

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廃校となった小学校を利用した「絵本と木の実の美術館」です。
著名な絵本作家の世界観が、この地で校舎の内外で展開され一冊の絵本になっています。各専門室なりの展示も充実していますし、最後の在校生3名の落書きが、いきいきと輝いていました。

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これも廃校プロジェクトで、海外の著名な現代美術作家による「最後の教室」です。
先ほどとは、うってかわり、お化け屋敷のような雰囲気ですが、暗闇や静けさに慣れると、儚い灯り、扇風機の風、あたりに聞こえる心臓音が、明確に認識でき、心地よくなってくるから、不思議です。多くの人が、じっと静かに佇んでいます。

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二泊目の宿は、私も好きなジェームス・タレルの作品「光の館」です。
これはアートでもあり宿泊施設でもあります。年間を通して、世界中から多くの人が訪れるので、予約で一杯だそうですが、地元の人々と楽しそうに交流して帰っていくそうです。この写真は、天井が開き、空が見えてくる瞬間です。

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素晴らしい風景をひとつ。内浦地区にもありますが、ここにも有名な棚田があります。
しかし、この撮影ポイントには看板が立ち、駐車スペースまで用意され、多くの撮影者が会話を交わしています。改めて素晴らしい風景は、それ自体に価値があり、多くの人を繋げていくのだと、実感しました。

アートは越後妻有地区全体に散らばっているいるので、車かバスで移動します。アートを体験しているというよりは、「大地の芸術祭」というタイトルの通り、生活の営まれている広大な大地を巡りながら、メッセージ性の強いアートを体感します。このバランスが絶妙で飽きさせません。

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これも空家プロジェクトの一つですが、「記憶の家」といいます。
そこら中に、クモの巣のように張り巡らされた毛糸が、廃屋が経験してきたであろう、思い出の存在や気配のようなものを感じさせ、人が住まなくなったからといって、価値がないと決めつけていいのか、考えさせてくれます。

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同じ「記憶の家」の入り口です。このイベントの観覧パスポートには全部で300の番号が並びますが、それぞれのアートに対応した番号があり、このようにボランティアで参加している高齢者の方々や夏休みを利用して来ている学生達が、所定の番号にハンコを押してくれます。この合間に交わす挨拶や笑いが、本来なら、五感を駆使し脳を使うだけのアート鑑賞に、心の通う暖かさを添えています。

ホームページの開催概要にある企画意図なども、ぜひご覧になってください。
アートの中には、常設のものもあれば、この期間だけで消えゆくものもありますが、全てのアートが地域の潜在的価値の上に成り立って、地域の魅力を発信しているので、町や村がキラキラきらめいて見えます。このイベントは、過疎や高齢化に悩む地域を、アートによって掘り起こす先駆的な例ですが、着実に地域に潤いを与え、地域外との結びつきを深めています。

さて、我らが高浜町にも、
素晴らしい風景(里山や山だけでなく、海も!)の中に、空家、廃校など、魅力的な場所が無数に点在しています。白宣言を軸としたアイディアに、町の資産、町民パワーを組み合わせ、どんな未来が描けるのか?10年前から取り組んでいる大先輩に出会い、叱咤激励されたているような気がしました。

道田 淳

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